シリコーンゴムとエラストマー
エラストマーとは広義的にはゴム状の弾性体を指す総称ですので、本来シリコーンゴムもエラストマーの中にカテゴライズされますが、ここでのエラストマーとは狭儀的に一般的な熱可塑性エラストマー(TPE)に限定して、熱硬化性であるシリコーンゴム(VMQ)との素材としての比較になります。
シリコーンゴムとエラストマーの相違点
まずは両者の相違点を表にまとめてみました。

シリコーンゴムと熱可塑性エラストマーの一番の大きな違いは、その成形方法となります。シリコーンゴムは熱硬化性で高温加熱により硬化し、熱可塑性エラストマーは高温加熱により軟化し流動性を帯び冷やすと硬化するという性質の相違により、相互のメリット、デメリットが発生します。
熱可塑性エラストマー
- 素材の比重が軽量で安価であるため、また架橋が不要なので生産工程が少なく済み低コストである。
- 熱可塑性であるため、加熱により再成形が可能。素材のリサイクルができる。
- 熱溶着が容易である。
- 大量生産品の場合、コストパフォーマンスが高い。
- シリコーンゴムと比較して多くの熱可塑性エラストマーは、永久歪みが大きくゴム弾性が劣る。また、耐久性、繰り返し疲労性にも劣る。
- 温度上昇によって物性低下が大きく、塑性変形も増大するため、耐熱性が不十分で限界があり、高温環境化には不向きである。
- 種類・グレードによっては、耐油性が低いものがあり、油分に触れるものには使用が難しい。
- 射出成型機による成型となる為、設備費用、金型など高額である。
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シリコーンゴム
- 全般的に物性に優れる。機能部品等にも向いており、使用環境に合わせて素材種類を選択できる。特に圧縮永久歪みに関しては、他の軟質素材よりも歪み量が少ないため、繰り返し応力がかかる部品、商材に向いている。
- 熱硬化性であるため、耐熱性に優れる。低温環境化にも耐性があるので使用可能環境温度が広い。
- 成型機等設備関連、成型金型は比較的安価である。
- 耐候性に優れる。UV,オゾン安定性を有し、湿気に対しても耐性があるので長期の屋外条件に耐える事ができる。
- 熱硬化性で架橋を必要とするため素材の再利用ができない。
- 架橋を必要とする為、成型時間を要し、素材の配合も複雑となり生産工程が長くなるため高コストである。
- 素材の比重が重く、比較的高価格であるのでこれも高コストの要因となる。
- 機械強度や摩耗等の外部からの力に対して、物理的に弱い素材である。
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主な使用用途
熱可塑性エラストマー製品/商品事例(例)
| 日用品・生活雑貨 | 歯ブラシグリップ、スマホケース、靴底、文房具のグリップ部 | ||||
| 自動車内装 | ドアシール、カップホルダー、グリップ部品、ダッシュボード周辺の柔軟素材 | ||||
| 電子機器 | ケーブル被覆、イヤホン部品、オーバーモールド部品 | ||||
| 医薬品包装 | 点眼容器、医薬品キャップ、柔軟性を要するパッケージ部材 | ||||
| スポーツ・玩具 | スポーツ用品のグリップ、幼児向けの安全性を重視した柔らかい玩具 | ||||
●各種グリップ類や柄など手で持つ所
●異素材、同素材での色違い等の2色成型品
●材料を多く使用する、車載や建築関連の商材
なお、当社では熱可塑性のエラストマー成形は取扱がございませんのでご質問、ご要望をいただいても、ご対応はできかねますので、ご了承ください。
素材が持つ機能的な部分は、現状ではシリコーンゴムの方が圧倒的に優位性が高く成形方法にもよりますが、金型費用もインジェクション限定の熱可塑性エラストマーの方がコンプレッション成形が可能なシリコーンゴムよりも高価であることが一般的です。よって、大量生産品であれば金型を含めたトータルコストは熱可塑性のエラストマーの方がメリットはありますが、少量の場合はシリコーンゴムの方がメリットは大きいと思われます。
●耐熱・耐寒・耐候性・耐久性が必要な機能的な特性が重視される分野 → シリコーンゴム
●量産性・サステナブル・コスト重視等、生産性が重視される分野 → 熱可塑性エラストマー
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