シリコーンゴムの劣化・老化現象は著しく遅く耐候性に優れています

シリコーンゴムの劣化老化

シリコーンゴムは劣化・老化しづらい素材です。整形手術などでシリコーンゴムを体内に埋め込むなど聞いたことがあると思います。数年で劣化・老化してしまっては体内には入れられません。ゴムの特性を長期間維持することができるのがシリコーンゴムになります。

ゴム全般の劣化・老化とは?

現象

  • ゴム硬化
  • ゴムの軟化
  • ひび割れ
  • べたつき
  • 流動
  • 伸び率低下
  • 反発力低下

原因

  • 酸化劣化
  • オゾン劣化
  • 溶剤劣化
  • 紫外線劣化
  • 電気的劣化
  • 機械的劣化
  • 放射線劣化
  • 微生物劣化
  • 分解劣化

ゴムの劣化・老化現象が発生しても 劣化原因が複数ある場合があり特定することが非常にむずかしくなります。ゴムは製造した時点から劣化・老化がはじまると言われています。時間と共に製造当初の性能が損なわれて行きます。

シリコーンゴムの劣化・老化

他のゴムと比較して著しく劣化・老化スピードが遅いのがシリコーンゴムとなります。耐候性に優れていて自然劣化はほとんどしません。シリコーンゴムの劣化・老化は外部要因によることが多く、超高温劣化や溶剤劣化、油による劣化などがあげられます。

超高温劣化
ゴムの中でもシリコーンゴムは特に耐熱性に優れた性能を発揮する種類になります。200℃の環境下でも性能が1/2になるのに10,000時間もの耐性があると言われています。

しかし、220℃以上の環境に長時間さらされますと急激にゴム性能を失い、硬化や反発力、伸び率の低下が生じます。超高温下ですとシリコーンゴムの劣化・老化が加速します。

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有機溶剤劣化
シリコーンゴムは比較的有機溶剤に強く、アルコールや希酸や希アルカリでは膨潤などの変化はありますが大きな特性変化がありません。トルエンやガソリンなどは大きく膨潤するものの破壊や分解するわけではありませんので、溶剤が揮発すると元の状態に戻ります。

注意すべきは強酸や強アルカリで、シリコーンゴム自体が破壊されたり、分解されたりしますので使用することは避けるべき薬品となります。

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油による劣化
シリコーンゴムは、高温の環境下での耐油性に優れています。特に100℃を超える高温環境下では、他のゴムよりも耐油性能という点では優れた結果となります。よって、シリコーンゴムは高温時に優れた耐油性を発揮できる素材と言えるでしょう。但し、長時間油に浸かった状態で放置しますとシリコーンゴム内部に油が含浸してしまい膨潤します。膨潤すると油が抜けませんので油による劣化と考えます。

シリコーンゴムの耐候性・耐オゾン性

シリコーンゴムの耐候性

シリコーンゴムは耐候性・耐オゾン性に優れています。
試験的にオゾン濃度が高い環境下において、有機ゴムが数秒~数時間で表面にひび割れを生じてしまう200ppmの条件下でも、シリコーンゴムは数十日後でわずかな強度低下がみられるだけで、ひび割れなど生じません。

自然の大気での劣化は、オゾン以外に紫外線、オキシダント、酸性ガスなどが総合的に作用して起きますが、シリコーンゴムは特に硫山系ガスの多い火山地域を除いて大きな劣化は認められません。

耐候性試験

シリコーンゴムの長期間屋外暴露実験結果
ゴムの種類 主要配合内容 最初に表面に亀裂が認められるまでの時間 日光暴露で伸びが初期値の50%になるまでの時間 日光暴露で伸びが初期値の25%になるまでの時間
加硫系 カーボン
phr
老防
phr
ワックス
phr
Panama Rock Island Panama Rock Island Panama Rock Island 
一般シリコーンゴム 過酸化物加硫 なし なし 10年
以上
10年
以上
10年
以上
10年
以上
フロロシリコーンゴム 過酸化物加硫 なし なし 6月 4年 10年
以上
10年
以上

※ 時間表示は、初期値の75%になるまでの時間

高オゾン濃度環境下試験

高圧電気機器の内部では、各種の放電によりオゾン濃度が高くなる可能性があります。オゾンによって多くの有機ゴムは劣化が促進されますが、シリコーンゴムは優れた耐性を示します。

オゾン濃度が200ppmの強制促進試験の場合有機ゴムは数秒~数時間で劣化して表面にひび割れを生じるが、シリコーンゴムは4週間でも、わずかな強度の低下があるだけでひび割れは生じない。

暴露時間
(日)
硬さ変化
(硬度)
引張強さ変化率
(%)
伸び変化率
(%)
7 +3 -5 0
14 +4 -15 -5
28 +7 -15 -5

シリコーンゴムの耐水性

シリコーンゴムの耐水性

シリコーンゴムは、一般的に撥水性を必要とする用途に数多く使用されています。

これはシリコーン分子を覆っているメチル基の影響によるもので表面が相互作用の小さいメチル基で覆われている為、分子全体間の凝集力が弱く、結果として表面張力も低いので、シリコーン分子が存在する個体表面と、表面張力が高い水との間で、強い撥水が見られます。

シリコーンゴムは、長時間、いかなる温度帯でも水であれば、温水、冷水、沸騰水を問わず吸水量は約1%前後であり、機械的強度や、電機特性に殆んど影響しません。

一般的にシリコーンゴムは、常圧下でスチームに接触しても、殆んど劣化する事はありませんが、加圧されたスチームの場合、スチームの圧力が増すとその影響は大きくなります。

150℃以上の高圧スチームでは、シロキサンポリマーが切断されてしまい、ゴム物性が低下します。この現象はシリコーンゴムの処方や、加硫剤の選択などにより、改良する事ができ耐スチーム性、耐熱水性を向上させた、グレードもございます。使用する条件、環境を充分に検討したグレードの選択が重要になります。

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各種ゴムの耐水性

防水パッキンなどに使用されるゴム類ですが ゴムの種類によっては水に弱い性質を持つゴムもあります。その中でもシリコーンゴムは水に対する耐性が優れた性能を発揮します。

一般的に、VMQ、NBR、HNBR、FKMは他のゴムと比較し耐水性に優れ、ACM、U(特にポリエステル系)、IIRは耐水性に劣ります。

ゴムの種類  略号 耐水性評価
シリコーンゴム VMQ
ニトリルゴム NBR
水素化ニトリルゴム HNBR
フッ素ゴム FKM
アクリルゴム ACM
ブチルゴム IIR
ウレタンゴム(ポリエーテル系)
ウレタンゴム(ポリエステル系)
評価:5=耐性が有る/4=特定の環境を除き耐性が有る/3=特定の環境を除き耐性が弱い/2=特定の環境を除き耐性が無い/1=耐性が無い

各種ゴムの加水分解

『経年劣化』と認識されているゴムの加水分解。

加水分解とは、反応物と水が反応し生成物に分解する反応で、この加水分解に弱い代表格として、ウレタンゴムがあります。その特性である強磨耗性により靴底のパーツに使用されることが多いですが、水分に弱く、加水分解を起こし靴底が割れてしまうことが度々、発生します。

また、カメラのダンパーゴムが加水分解により分解されてしまい、粘着性をおびた状態で溶け出し、シャッター膜に張り付き、ちゃんと写真が撮れなくなってしまう故障や、古いゴムホースが割れてしまったり、内部がぬるぬるになり、表面が剥離してしまい、そのカスが、タンク等に蓄積して目詰まりしてしまったという現象はゴムの加水分解による劣化により発生した事例もございます。

ゴムは全般的に水分に対して強いと言われますが、シリコーンゴムは、水に対して比較的強いものの、潤滑油などの添加剤である、酸・アルカリに対して加水分解を受けやすく、耐アルカリ性、耐酸性に関しては、他のゴムに劣る場合もありますので、使用環境を考慮した注意が必要です。

透明なシリコーンゴムも、高温スチーム等に長時間さらす環境であったり純水や水道水以外の不純物が多量に混入された水の中に浸漬させたまま、数週間から数ヶ月放置したりすると、表面がヌルヌルになってしまったり、白濁してしまったり、接着していたものが剥離してしまう等の症状が発生することがあります。

シリコーンゴム水浸試験

シリコーンゴム加水分解
水浸2週間で白濁が見られ、表面がヌルヌルになった。

ウレタンゴム水浸試験

ウレタンゴム加水分解
加水分解に弱いウレタンゴムは完全に白濁してしまい、シリコーンゴムより顕著に変化が見られる。

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