難燃性シリコーンゴムはUL94-HB~UL94-V0グレードまで成形しています
一般的にシリコーンゴムは燃えにくい素材(難燃性)と言われていますが、決して全く燃えない素材(不燃性)ではありません。シリコーンゴムに一度着火してしまうと、そのまま燃え続けてしまう素材です。
難燃性シリコーンゴムとは特殊な添加剤を配合することで、燃えにくい特性や自己消火性を付与することができます。自動車、航空機等の輸送機器向けや光学機器向けなどの極めて高い難燃性が求められる商材に採用されます。
シリコーンゴムは熱には強いが燃えないのか?
シリコーンゴムはゴムの種類では耐熱性が高く、200℃が耐熱安全温度とされています。熱には強いですが燃えないわけではありません。シリコーンゴムの難燃性の尺度については 国際規格のUL規格で管理され 規定の試験方法で等級に分けられています。一般的なシリコーンゴムは UL94-HB レベルです。当社ではシリコーンゴムで一番燃えにくい UL94-V0 を取り扱っています。
シリコーンゴムのUL規格
UL規格とは、(Underwriters Laboratories : UL)という独立した製品安全認証機関が策定する材料・部品・装置から最終製品までの機能と安全性に関する規格基準で、様々な内容についての規格を有しますが、ここでは耐燃性(UL94)と呼ばれる規格にてシリコーンゴム素材の難燃性についての紹介です。
耐燃性は、その程度により下記に分類されます。
不燃性 | 継続して燃焼しない性質(継続の程度は規格により判断) |
難燃性 | 燃焼する速度は遅いが、ある程度の時間は燃え続ける性質 |
自己消火 | 炎にさらされる間は燃えるが炎から離されれば消火する性質 |
遅燃性 | 自己消火性は無いが、燃焼する速度が遅い性質 |
シリコーンゴムの耐燃性に対する評価
各種シリコーンゴムの多くは、遅燃性の性質を評価する UL94-HB を取得している又は取得相当品となりますが、さらに耐燃性に優れたグレードは難燃性シリコーンゴムと呼ばれ、UL94-V0 を取得したシリコーンゴムが該当します。しかし、難燃性を発揮するために配合する添加剤等の影響で、硬度と色調に制限が生じてしまいます。
UL94-V0 評価方法と認定
垂直燃焼試験
- 垂直に保持した試料の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させる。
- 燃焼が30秒以内に止まったならばさらに10秒間接炎させる。
認定基準
- いずれの接炎の後も、10秒以上燃焼を続ける試料がない。
- 5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が50秒を超えない。
- 固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
- 試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる燃焼する粒子を落下させる試料がない。
- 2回目の接炎の後、31秒以上赤熱を続ける試料がない。
UL94-HB 評価方法と認定
水平燃焼試験
- 試料を片端で固定して水平に保持しその自由な端に30秒間ガスバーナーの炎を接炎させる。
- 炎を離した後に試料が燃焼を続けたならば、その燃焼の速度を測定する。
認定基準
- 厚さが3.05mm 以上の試料については燃焼速度が毎分38.1mmを超えない。
- 厚さが3.05mm 以内の試料については燃焼速度が毎分76.2mmを超えない、あるいは炎が試料の端から102mm の点に達する前に燃焼が止まる。
難燃性シリコーンゴムと一般シリコーンゴムの常態物性比較
難燃性 シリコーンゴム |
一般 シリコーンゴム |
||||
硬度(A) | 55 | 55 | 72 | 51 | 70 |
色調 | 灰黒色 | 淡ベ-ジュ | 淡ベ-ジュ | 半透明色 | 灰白色 |
密度(g/cm3) | 1.41 | 1.37 | 1.45 | 1.16 | 1.34 |
引張強度(MPa) | 4.8 | 7.2 | 7.9 | 8.7 | 5.5 |
切断時伸び(%) | 420 | 470 | 200 | 390 | 330 |
引裂強度(クレセント形)(N/mm) | 9 | 12 | 9 | 7 | 11 |
引裂強度(アングル形)(N/mm) | 20 | 16 | 18 | 24 | 16 |
圧縮永久歪み(%)180℃x22h | 17 | 26 | 11 | 19 | 26 |
UL Flame Class(ULで認定された難燃レベル) | 94-V0 0.75t~ |
94-V0 0.75t~ |
94-V0 0.75t~ |
94-HB 0.75t~ |
94-HB 0.75t~ |
難燃性シリコーンゴムシートのオーダーメイド販売
ゴムの難燃性は国際標準であるUL規格にて分類されています。
当社ではシリコーンゴムの難燃グレードタイプは55°72°の硬度で2タイプを用意してます。
硬度 | ゴムシートサイズ | 最小厚mm (公差) |
最大厚mm (公差) |
厚み刻み (mm) |
表面 | 色調 |
55 | 300X300 | 0.5 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | 通常みがき |
灰黒色 淡ベージュ色 |
300X300 | 0.5 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | ブラスト調 | ||
280X380 | 0.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 通常みがき | ||
280X380 | 0.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
280X380 | 0.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 鏡面加工 | ||
450X450 | 1.0 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
500X500 | 1.0 (±0.2) |
3.0 (±0.3) |
0.5 | ブラスト調 | ||
72° | 300X300 | 1.0 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | 通常みがき | 淡ベージュ色 (原色) |
300X300 | 1.0 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | ブラスト調 | ||
280X380 | 1.0 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 通常みがき | ||
280X380 | 1.0 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
280X380 | 1.0 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 鏡面加工 | ||
450X450 | 1.5 (±0.2) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
500X500 | 1.5 (±0.2) |
3.0 (±0.3) |
0.5 | ブラスト調 |
難燃性シリコーンゴムの使用例
自動車や航空機、船舶、鉄道等の輸送機器向けの製品・部品に採用されるケースが多いのですが、これは法律や各メーカーの自社規格で保安基準が明確にされており、それらを満たすために難燃性素材の採用が必須であることが定められている製品・部品への採用となります。
また、業務用・家庭用に関わらず、LED光学機器の部品にも難燃性シリコーンゴムが採用されるケースが増加してます。LED光学機器も自己発熱する機器であることから、器具からの火災等の発生防止に少しでもリスク回避できるよう難燃性素材が採用されるようです。
難燃性シリコーンゴムの採用条件
色調の制限
材料コンパウンド自体が硬度55°は灰黒色、淡ベージュ色、硬度72°は淡ベージュ色のみとなっており、そのままの色調でのご提供になります。追加で顔料の投入による着色ですが難燃性能の変化が懸念されるため、難燃性シリコーンゴムへは着色いたしてません。但し、性能変化が不問であれば対応いたします。
硬度の制限
硬度55°、72°の2タイプのみのラインナップとなってます。それぞれの硬度品のブレンド又は他グレードのシリコーンゴムとのブレンドしての硬度調整に関しては、こちらも難燃性能への懸念からご対応いたしてませんので、ご了承願います。
その他
・試作、量産対応含めまして、製品化へは金型が必要になります。
・0.75t未満の肉厚では、UL認証外となりますのでご了承願います。
難燃性シリコーンゴムの よくある質問Q&A
難燃性のレベルは、他にも存在しますか?
ULが定めた難燃性を含むレベルは下記のランクで定められています。当初ではUL94-5VB/5VAのclassのシリコーンゴムは取扱ございません。
ランク | 評価 | 燃焼 |
UL94-HB | 遅延性 | |
UL94-V2 | 難燃性 | 燃えやすい ↓↓↓ 燃えにくい |
UL94-V1 | ||
UL94-V0 | ||
UL94-5VB | ||
UL94-5VA |
押出成形品の製作は可能ですか?
上記ラインナップの中で一部のみ対応可能です。
可能な種別・・・硬度55°色調:淡ベージュ色
(形状・寸法の制限もございますので詳細は担当までご相談ください)
イエローカード(ULが作成・発行する安全認証及び品質情報カード)はいただけますか?
輸送機器向けに採用される部品等であれば、原則イエローカードはご提供可能ですが、用途等ご開示いただけない製品(シート類含む)に関しては、ご提供できるか否かは都度確認となってしまいます。予めご了承ください。
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