シリコーンゴムの加硫とは?架橋とは?熱と圧力でゴムを固めます

加硫とは?架橋とは?キュラストメーター

一般的なゴムは熱と圧力で熱硬化させます。このことを加硫・架橋と呼びます。一部の液状シリコーンゴムなどは自然硬化するタイプもあります。プラスチックは原材料を溶かして金型内で冷やして固めますが ゴムの場合は熱を加えて固めます。

加硫と架橋(パーオキサイド加硫)の違いとは?

  • 「加硫」硫黄をバインダーとした分子連結
  • 「架橋」過酸化物を用いた分子分解連結

加硫とは、生ゴムに「硫黄」の加硫剤を混ぜ合わせた上で加熱・加圧する事により引き起こる化学反応で、「硫黄」がバインダーとなりゴムの分子結合で編み目状に連結構造になることを言います。この化学反応でゴムは強靱な弾性と安定した耐熱性を持つようになります。

「架橋」(パーオキサイド加硫)の意味も「加硫」と同じ意味で用いられますが、硫黄以外の有機過酸化物や金属酸化物、有機アミン化合物などを使用して分子を分解し連結結合させることを「架橋」(パーオキサイド加硫)と呼びます。

ゴム弾性を得るための架橋方法は多種多様で網目状の分子結合の配列の中に架橋部分をつくることにより、液状のように柔らかい物質からエボナイトのように堅い物質まで幅広い弾性物をつくることができます。

シリコーンゴムの硬化系は「架橋」(パーオキサイド加硫)ということになりますが 一般的にはゴムが硬化することを 総称して「加硫」と呼んでいるようです。当社でもゴムが固まることを混乱しないように「加硫」と呼んでいます。ご了承ください。

硫黄加硫

加硫とは硫黄

硫黄加硫ゴムの最大の特徴としては ゴムの伸びが良くなることになります。また過酸化物加硫と比較すると成形が比較的容易で生産性を向上させます。コスト的にも安価にできる特徴もあります。

硫黄加硫ゴムの種類

  • 天然ゴム(NR)
  • イソプレンゴム(IR)
  • ブチルゴム(IIR)
  • エチレンプロピレンゴム(EPDM)
  • ブタジエンゴム(BR)
  • スチレンブタジエンゴム(SBR)
  • クロロプレンゴム(CR)
  • ニトリルゴム(NBR)
    など

過酸化物加硫

架橋過酸化物

過酸化物加硫とは、有機過酸化物を加硫剤として用いた加硫をいい、パーオキサイド加硫とも言います。無硫黄加硫とも言い有機過酸化物とは、分子中に酸素-酸素結合を有する化合物のことをいい、加熱することで化学反応して、2つのシロキサン鎖(※1)の間に炭素鎖(※2)からなる架橋を形成することを言います。

過酸化物加硫の特徴

  • 耐熱性が良い
  • 耐圧縮永久ひずみ性に優れる
  • 非移行性で汚染が少ない
  • 安全衛生性が高い
  • 劣化スピードが遅い
  • 成形時間が短い
  • 透明性を作成しやすい

過酸化物加硫ゴムの種類

  • シリコーンゴム(SI)
  • フッ素ゴム(FKM)
  • エチレンプロピレンゴム(EPDM)
  • ニトリルゴム(HNBR)
  • ブタジエンゴム(BR)
  • スチレンブタジエンゴム(SBR)
    など

■ 硫黄加硫と過酸化物加硫の使い分けの指標

  • 伸びや柔軟性が求められる時は硫黄加硫
  • 相対的に価格が安いのは硫黄加硫
  • 耐熱性能が求められる時は過酸化物加硫
  • 汚染が心配される時は過酸化物加硫

硫黄加硫の-S-S-結合による架橋と過酸化物加硫の-C-C-結合による架橋の結合エネルギーを比較すると過酸化物加硫の結合エネルギーが高いため、過酸化物加硫の方が硫黄加硫に比べて耐熱性がよいと考えられている。

その反面、柔軟性にかける一面を持っており、引っ張り強度や動的特性は硫黄加硫よりも劣ってしまう。

硫黄加硫は硫黄系化合物が影響する金属やプラスチックスの汚染などの問題があり、使用用途によっては過酸化物加硫でなければならないものもある。また、過酸化物加硫は、配合コストが硫黄加硫と比較して高い短所を持っています。

付加加硫

白金化合物(プラチナ)を使用して加硫させる架橋機構である。付加型液状シリコーンとミラブル型シリコーン両者に用いられます。医療や特に安全性が求められる現場で採用される特別なグレードの加硫系になります。

付加加硫の特徴

  • 臭気が少ない
  • 引き裂き強度が上がる
  • 圧縮永久歪みが小さい
  • 成形分解成分がほとんど残らない
  • 加硫阻害が起こりやすく成形が難しい
  • ポットライフが短い
  • コストが高くなる

■ 過酸化物加硫と付加加硫の使い分けの指標

  • 成形性が容易なので一般的なゴム成形現場では過酸化物加硫
  • 硬化時間は長いが過酸化物加硫
  • 硫黄などの触媒毒に強いのは過酸化物加硫
  • 成形が難しく周りの環境で加硫阻害が起きやすいのは付加加硫
  • 硬化時間が早いのが付加加硫
  • 不純物が極めて少なく人体に安心安全なのは付加加硫

過酸化物加硫は、酸素による硬化阻害が顕著であるため、空気に触れた部分の硬化が不十分になりやすい性質を持っている。硬化時間が遅いことや、触媒毒に強い特徴が挙げられます。

白金化合物(プラチナ)の触媒作用を利用している付加加硫は、過酸化物加硫とは正反対の硬化時間が速い、触媒毒に弱い、酸素阻害に強いという特徴があります。

硬化時間が短い付加加硫は生産性に優れた工場生産部品として選択される硬化型です。しかし非常にデリケートな一面を持ち合わせています。硫黄、リン、窒素、スズなどの化合物が混入、接触、近くにあるだけで加硫が進まない硬化阻害が起きます。

また白金化合物(プラチナ)を配合した直後からのポットライフの短さがあります。材料管理や製造環境などの影響を受けやすく取り扱いが難しいのが最大の短所となっています。

これらのことから 医療や食品など特に衛生面や安全性が求められる場面以外は選択することを避けた方がいいと考えます。人体に安心安全を第一に要求される場合は逆にお勧めです。

縮合型加硫

縮合型加硫

液状シリコーンゴムの硬化反応として縮合型がある。縮合型とは、空気中の湿気と反応して表面から内部へと硬化が進行する化学反応をいいます。

縮合型液状シリコーンには一成分形と多成分形とがあり、両者共に室温にて硬化することからRTV(Room Temperature Vulcanizing)と呼ばれています。

1成分形は接着性を有していることから、接着シール、コーティングの用途で使われています。多成分形は接着性が付与されていないので、型取りやポッティングなどに用いられます。

加硫状態の品質管理

未加硫ゴムが成形を介して正しく加硫されているのか確認する必要がございます。形にはなっているがゴム化しているのか確認する必要がございます。当社ではキュラストメーターという加硫検査機を使って配合混練りのロット毎に硬化測定を行い、記録管理しております。

キュラストメーターを用いたゴム材料の加硫試験

キュラストメーター

試験手順

  1. 『キュラストメーター使用手順書』に基づき、ロール工程を終わらせます。
  2. その未加硫ゴムから、サンプルを採取しキュラストメーターにセットする。
  3. 材料に応じて加硫温度を設定して約6分~10分間加硫させる。
  4. 記録紙に記録された加硫硬化曲線から硬化時間、求めたい硬度、硬化速度等、を読み取ります。
  5. 同じ配合№のマスター硬化曲線と比較し適切な硬化特性を示しているのか判定します。

キュラストメーター手順書

 

プリプレグ波形曲線の読み方

プリプレグ波形曲線 グラフの縦軸がスコーチタイムで加硫時間を読み取ることが出来ます。1目盛りで1分間となっています。

横軸はトルク(応力)を表し、硬化90%以上になると振り幅が一定となり(下図③の状態)適正硬化状態を示しています。

の範囲は、ゴム試験片をキュラストメーターの台に乗せて設定した温度、と荷重が試験片にかかり始め、まだ未加硫状態~硬化10%までの範囲で、材料に荷重がかかり、流動性をまだ持っている状態ということが出来ます。これを『ゲルタイム』と呼びます。

の範囲は、試験材料の最大トルクに対し10%~90%硬化するまでに要した時間を表しています。

の範囲は、最適硬化時間を経過し、試験未加硫ゴム片が、約100%加硫している状態・時間を表しています。

上記測定例の試験対象未加硫ゴムは、約1分荷重に対し流動し、そこから硬化がスタート、4分の硬化時間で、約90%硬化し、4分~5分が最適硬化時間と言うことが出来ます。

この試験をロット毎に行い、マスター保管している硬化曲線と比較し、その配合材料の妥当性を確認しています。

正常な一般的な加硫波形

キュラスト波形正常 シリコーンゴム硬度60°

プリプレグ硬化曲線と呼ばれるこの独特のお椀形状の波形曲線から、そもそもの性能を発揮したきれいな加硫波形を画いています。

異常がある加硫波形

キュラスト波形正常 キュラスト波形異常

左側の硬化曲線が正常なもの、右側の硬化曲線は、材料の使用期間を過ぎて自然硬化が始まった廃棄処分しなくてはならない材料です。見て解るように明らかに使用期限切れ材料はゲルタイムが消失していて、材料がゲル化しないことがわかります。この材料を成型で使用しても、金型のキャビ内に材料が流動することが出来ず、適正な材料流動性が期待できない為、成型は不可能という事が出来ます。

特殊材料の加硫波形

低硬度シリコーンゴム10°キュラスト波形 低硬度シリコーンゴム10°

硬度が低い為、最適硬化時間を経過しても横軸の振り幅が狭くトルクが弱い事がわかります。

アクリルゴム30°キュラスト波形 アクリルゴムの30°

低硬度のため横軸の幅が狭く低反発材であることがわかり、また、最適硬化時間が10分以上必要であることがわかります。

付加加硫シリコーンゴム70°キュラスト波形 付加加硫シリコーンゴム70°

樹脂パーツとの一体成型など成形加硫時に高温にできない場合、付加配合を用いて低温で加硫させますが、付加配合材の波形は非常にゲルタイムも短く急速に立ち上がり短時間で加硫する事がわかります。どの原材料を用いてもトルクは異なりますがこの特徴的な形状は付加加硫材、独特の箱型の波形です。

ウレタンゴム80°キュラスト波形 ウレタンゴム80°

非常に材料トルクの強い材料でゲルタイムが非常に短く、高温だと材料流動が悪く、金型で押し切るのに加硫時間と温度のバランス調整がシビアになる事が予測できます。

キュラストメーターによる硬化特性測定は、ゴム材料の試験に用いて適正を判断するツールでもあります。

製品に応じて、その使用材料と製品の寸法、ボリュームを加味した、適正成型条件を導く為のツールとしても重要で、その成形条件の妥当性の裏付けともなります。

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